ENo.0103　片翼のレジェ

わたしたちは、何処にでもいて、何処にもいない。
何処へでも行け、何処へも行けない、大気の気息の娘たち。

わたしたちは花の香を運ぶもの。
その場を健やかにすべく善行をなすもの。
それによっていつか、神の国へと至る魂を得るもの。

神の国へと至る道は遠いけれど、少なくともこの女神様の国は目指すところではないようす。

けれど、試しのときはとてもとても長いもの。
十五週、求められるのならばそれを叶えてさしあげてもよろしいかしら。
その間この眼は、ずるっこにならないよう、塞いでおかなけりゃならないけれども。

それにこのお城は、不思議な風に満ちていらっしゃるもの。
わたしたちの運ぶ風とは違う、水の匂いのする風が、このお城を清めていらっしゃる。

お噂によるとしばらく前、このお城には人魚の姫さまがいらして、その方がお力を残されたとか。
また別のお噂だと、その人魚の姫さまは、今も何処か、このお城の中にお隠れなのだそう。
誰も辿りつけない秘密のお部屋にお籠りになって、お城を守っていらっしゃるのですって。
このお城で彗星の女神様のお求めに応えてさしあげていたら、お逢いする機会もあるかしら。

それにしたって、どうして人魚の姫さまはお籠りになってしまわれたのかしら。
この、木と絡まりあったお城をお守りになるなんて、さぞかし大変な難行事だったでしょうに。
今もお一人でこのお城をお守りなさっているのなら、何かお力になれることがないかしら。
女神様のお言いなさる勇者さんたちから、このお城を、わたしもお守りすればいいかしら。

そうしたら、人魚の姫さまも、すこしはお喜びになるのではなくって？