ENo.0118　エクリプス

掲示板に張り出された模造紙を見た僕は、心底大きなため息をついた。
この一週間、求めている情報にありつくことが出来なかった。
やはりこの世界は、夢の世界なのだろうか。

改めて模造紙を何となく眺める。
土砂降り、雷、と言うワードが目に入り、とある記憶を想起した。


ーーー僕が屍の王を手に掛けたあの日を

王は気高く、そして自己犠牲を躊躇わない献身的な性格だったそうだ。
元々そう言う噂は風に乗って耳に入っていたので、
いつかは狩る時が来るのだろうと、自然と思い込んでいた。
出来ればその気高さも、自己犠牲というエゴを完膚無きまでに壊してしまいたかった。

王には命よりも大切な家族がいるらしい。
翠の眼がそう、まるでこの世界に遍く木々のように鮮やかな女性だ。
まずはそこに目をつけた。その家族とやらを見せしめとして手に掛けてしまえば良いと。
相手は普通の人間であった。だが、"僕たち"にとっては相性の悪い、穢れに対して異常なまでに耐性の高い人間だった。
だからといって、手こずるまでもなかった。
僕の弓で穿った時点で、彼女は死を待つだけであった。
その時の王の顔と言えば悲惨だったよ。

雷が轟く土砂降りの中、王は悲痛な顔で彼女を抱きかかえていたのが印象的だった。
だが、盲点だったのは王の槍が生と死の狭間を切り開く力を持っていたことだ。
ふとした隙を付かれ、彼女は狭間へと堕ちていった。
だから僕は彼女のその後は知らない。

だが、王はあっけなく穿たれた。本当に、あっけない最期だったよ。
美しいモノが無惨に散る姿はいつ見ても感動してしまう。