ENo.0143　ナイトロゥ・エイオー

　皮肉な話である。
私が送られた異世界で、私は勇者を捜すどころか、何故か魔王となって勇者を迎え討つことになった。

　勇者を捜す私の耳に最初に飛び込んできた情報は、この世界には明確に"勇者"と呼ばれる者達が存在するということだった。
短い期間で調べ上げた結果、勇者という名こそ冠しているものの、彗星の女神に創られし勇者の役割は破壊と侵略のようだ。
何故彼ら（彼女ら）を勇者と呼び、それを防衛する者達が"魔王#と呼ばれるのかには色々な事情があるらしい。
それはこの世界の歴史故、私が異を唱える気はないのだが…。

　ともあれ、私には"魔王を討つ勇者を捜す"という役目がある。
城を襲う勇者の中に、それを成すに足る者が居れば、どうにか私の世界に連れ出せないかと考えた。
もしくは、魔王と呼ばれる防衛側の者達の中に、私の捜す"真の勇者"は居るのかもしれない。
いや、寧ろ私としてはそちらに期待をしている。

　諸事情を考慮した結果、私は魔王としてこの世界の一つの城を守ることにした。
勇者の力量、魔王の力量を測るには、私自身が魔王として彼ら（彼女ら）の身近に在ることが必要不可欠だと判断したからだ。

　幸いにして城の設備や道具を魔力で操作する事で勇者を迎え討つのがこの世界の"理"らしい。
左腕を欠いた私でも十分に魔王の役割はこなせるだろう。

魔王として共に協力する同盟者も集めることが出来た。
天使、悪魔？ 外見はまさしく鳥 …様々な属性の魔王に協力を仰ぎ、私は今日から魔王として暫くこの世界で働く。