ENo.0266　セレーナ・ザ・ブラック・ノクターナル

　幾つかの仲間たちとの契り、同盟が心を少しばかり満たしてくれる。
　紅茶をすすりながら、カップの水面に望むのはかつての楽しいあの日々。
　少し取れた紅茶と兵器の山をいくつか見ながら、歌で再軍備を仲間たちへと促し、
　合流を果たした新たな仲間たちを所定の場所へと誘導しよう。
　商売の神はあいも変わらず賑やかだけど、心を満たすにはすこしばかり足りなくて。

　――素材を手に新たに築くは迷宮。　それは己の心を反映した夢幻の宴。
　叫鳴する歌は心を引き裂く破滅の歌。殺しに来る者は未来永劫をここで彷徨う心の歌。
　彼ともう一度出会う、その時だけを夢見て言霊が城を築けば、己の心の隙間を満たしてくれる。
　いつか必ず会えると信じて。歌を紡いで朝日を夢見る。
　しかし、その夢は以外にもすぐに叶うものなのかもしれない。夢は、抱き続ければいずれ。
　それを叶えるかのように、柔らかな風が城にふわりと入る。
　城に吹く風は砂埃を孕んでいるのが常だったけれど。その風は何者も孕まない優しい風で。

　風が形作るヒトの形。　そして、そこに浮かび上がる顔の輪郭に、私は。
　　――ああ、救われたのだなと。　一枚の涙を顔に流して。

　「――もう一度、旅に出ようよ。　勤めを果たしたら。」

　どれほど待ちわびただろう。その言葉を。
　それが嘘偽りでないことを知って私は。優しく微笑みを返して。

　――もう一度、旅に出る。　城の外へ、と――。