ENo.0070　【teaz!メンバー】クリスプ

～♪、♪♪

テレビの前に座り込んで鼻歌を歌う魔王一人。
画面にはteaz!のライブ映像が映し出されている。

「いや～、いいライブだったなあ、これ！」
「荒れ狂う彗星の女神！相変わらずやってくる勇者！！あわや世界は大惨事ッ！！」

「そこに颯爽と流れ出す俺達の音楽ッ！湧き上がる人々ッ！！まさしく、アイドル！！」

わぁぁっ、とタイミングよくスピーカーから観客の声が流れる。

「正直アイドルとか不安しかなかったが……」
「なんだかんだ楽しいし、世界もなんか平和みたいだし、もう暫く続けてもバチは当たらないだろ！」
（元の世界の知り合いには悪いけど……）

女の子にちやほやされるのも悪くはない……。と魔王が鼻の下を伸ばしたその時。

　　　　♫♬♪♫

短いチャイムが鳴る。……玄関の呼び鈴だ。

「……へ？客？」

ＤＶＤの再生を止める。

「今日、誰か来る予定あったか……？」

ううん、と首を捻りながら城の入口へと向かう。

「はーい、どちら様ですかー……」
「！！！？？」

目の前に立っているのは藤色の髪をした女性……。

「あっは、よーうやく見つけた！」
「んもぅ、あんたもあの人もすーぐどっか行っちゃうんだから！冒険者だってもう少し家族サービスぐらいしてよねっ！」
「それより今アイドルやってるんだって？ちょっと詳しく聞かせなさい！」

暫く口をパクパクさせていた魔王は、ビッと相手を指差しようやく声を出す。

「か……母さんッ！？なんでここにいるんだよッ！！？」
「……なんでって、愛する息子の顔を見に？」
「そうじゃなーーーい！！」

魔王の悲痛な叫びだけがこだました……。