ENo.0059　笑鴉

巨大な城は骸を積み上げ――なんてことはない。
骸がせっせと石を積み、何とか体裁を整えた粗末な小屋――というか部屋？――を中心に、張りぼてのような外装を取り付けていく。
……当然、骸が。

「主様、指示を」
「適当にやれ」
「適当にやるほどフレッシュな脳を持ち合わせておりません」
「そうだった。前回はそれが面倒で投げたんだった」

極々平凡なキョンシーであるそれは、そこそこ具体的な指示がなければ動けない。
そんなことは曾ての経験というかずっとご存じのはずなんだけどなあ、とか。思いながらも十数体の骸は黙々と働く。
粗末な小屋の中心に、不釣り合いの豪華な寝椅子の上に転がる笑鴉は細い顎に手を当て、僅かに首を傾げる。
それは十秒も無い思案。面倒、という行動理念だけは確たる彼は、あまり長考しない。

「では、よし。指揮官を作ろう」
「左様で」
「しかし素材が足りないな……今回は仕方ない。まあ取り敢えず、格好だけで今は充分だからな」

さて、果たして立派な指揮官をこのぐうたらが生み出せるのか。

「何、曾て殆ど俺と同じ知能の分身を作ったことがある。なのに勤勉。あれは自信作だ」

その人が主様だったらよかったのになあ、とか、黙々と築城を続ける骸達は思うのだった。