ENo.0011　黒羽＝クエーサー・セバスチャン

私（わたくし）の名は『黒羽＝クエーサー・セバスチャン』
由緒正しい執事の家系に生まれし羊の獣人・羊人（ひつじびと）でございます。

お仕えしていたお嬢様達を狼人（おおかみびと）の村に送り届けた後、私は自分のルーツを探す為に羊人の村を探すことにいたしました。
本当はもっとお嬢様の傍に居たかったのですが、「さっさと旅立ちなさい、この極潰し」と罵られ追い払われましたので嬉しい半分悲しい半分に旅立つことに。
出来ればもっと罵られたかったのですが仕方ありませんね。

難なく羊人の村の場所が判明したので険しい道を進み、あともう1日もあれば羊人の村に辿り着くだろうという林道までやってきました。
しかし突如光が降り注ぎ、私を包んだかと思えば、見知らぬ土地にいたのです。
そこは初夏の青々とした爽やかな風が吹く、レンガ作りの城の屋上でした。
目の前には三毛猫の着ぐるみが立っていました。
……身長は145センチ程でしょうか？割と小柄です。
三毛猫（の着ぐるみ）は私に近寄ると男性女性とも判断出来ない中性的な声で親しげに話しかけてきました。

「君がボクが召喚した魔王だね？
　ボクは君を召喚した神様の『ミケル』だよ！よろしくね！！」

「……大変申し上げ難いのですが、私、『黒羽＝クエーサー・セバスチャン』は執事でして魔王ではありません」

「執事()」

「ああああああああ！もうやだああああああああああ！！
　なんで魔王じゃないんだよおおおおお！！！召喚時にもう契約しちゃってるしボクのバカバカバカ！！！！」

手に持っていた包丁をグサグサと地面に刺していらっしゃるミケル様はどうやら魔王を欲していたようです。
私の左手の甲が光っているので手袋を外すと三毛猫マークがくっきりと浮かんでいました。
これがきっと契約の証でしょう。

「お伺い致しますが、ミケル様はなぜ魔王を所望されているのですか？」

「今度ね、この世界を創った『澱んだ彗星』の女神様の誕生日を祝う茶会するんだ。
　誕生会にはやっぱ主役に誕生プレゼントあげたいでしょ？
　それでね、勇者が週1で攻めて来るから魔王にそれを妨害させつつ茶葉と勇者の魂を集めて欲しいんだ。
　ボクだけ手ぶらで祝うの嫌だし……」

最後は情けない声でミケル様はしょんぼりとうなだれてしまわれました。

「わかりました。主（あるじ）の望みを叶えるのは執事の務め！
　この黒羽、新しい主であるミケル様の為に茶葉と勇者の魂を集めましょう！！」

「茶葉と勇者の魂集め、引き受けてくれるの？ありがとう！」

こうして私の新しい物語は始まったのです。